無理な「良い姿勢」よりラクな「悪い姿勢」の方が100倍マシ!?

自分で楽器の練習に取り組んでいても、アレクサンダー・テクニーク教師として日々「からだの使い方」をしていても、繰り返し驚きかつ実感するのが、無理な「良い姿勢」よりラクな「悪い姿勢」の方が何倍も良いということです。

 

もちろん姿勢は崩れているときより、崩れずに活き活きしている方が楽器は演奏しやすく、音もより豊かに響きます。

 

しかし、ちょっとでも無理して「まっすぐな姿勢」を作ると、その途端にとーっても演奏しづらくなります。姿勢は直接的な「コントロール」の対象にはできないのですが、私たちはどうしても姿勢を保とうとしたり伸ばそうとしたりして、不可能なコントロールをやろうとします。

 

これをやるよりは、崩れている、あるいは若干ダラッとしている方が遥かに遥かに身体に優しく、呼吸がしやすく、楽器は演奏しやすく、音もよく響きます。

 

本当の意味で「伸びている」「美しい」「正しい」姿勢は、もって生まれたものであり「やる」ものではありません。自分で「やる」ことは絶対できないものなのです。

 

ですが私たちはあまりにも「背筋を伸ばす」とか「姿勢を保つ」とか「猫背はダメ」とか「ダラッとしてはいけない」とか文化的または習慣的に思い過ぎていて、身体としては健康な背骨の柔軟性(=背中を丸めることができる)を犠牲にしてしまいます。

 

 

  • 背中を丸めるのは悪い事
  • ダラッとするのはいけない事
  • 姿勢はまっすぐ伸ばさなければいけない

 

 

そういうようなことを信じ込み過ぎていて、身体としては正常で健康な状態や姿勢でも「猫背な感じがする」とか「姿勢が悪い感じがする」と感じてしまいます。そのせいで、身体に負担と無理を強いて姿勢を良くしようとしたり伸ばそうとしたりして、結果的にはよっぽど演奏しづらい状態や苦しく痛い状態を作ってしまいます。

 

ラクな状態、自由な状態、動きやすい状態。そういったものを目の敵にしてしまう雰囲気が社会の中にも「自分」の中にもあります。そのため、楽器を演奏しにくさせるのに「安定」という名の「固定」を作り出してしまいます。

 

痛い。苦しい。大変。頑張らなければいけない。それは「良い姿勢」では有り得ません。良い姿勢はラクで、自由で、とてもハッピーな心身の状態です。姿勢は意志や力ではコントロールできない領域のものです。心拍や体温調整と同じくらい原始的な機能ですから。

 

その原始的で直接コントロールできない「良い姿勢」に近付くにはどうしたらいいのか?答えは簡単。無理に伸ばすよりは、本心と欲求に対して素直になって、姿勢を崩してしまいましょう。思い切ってダラッとしてみましょう。そのまま、ラクなまま楽器を手に取るのです。

変な感じや、間違っている感じはするかもしれません。でもラクですか?

 

もしラクで、音が問題なくならせるなら、それでいいのです。

 

だってそうでしょう?ラクで音も鳴らせるのなら、「姿勢は良くせねばならない」という理由だけでわざわざ無理にしんどい体勢を取らなくてもよいのです。わざわざ力む必要はないのです。

 

ものすごくダラッとしていても、すごく崩れている感じがしていても大丈夫です。自分のペースで楽器を演奏しはじめましょう。すると段々、身体が動きます。気付いたら、さっきまでの崩れは減っているでしょう。その頃には客観的に見たら別に悪い姿勢には見えません。

 

そしてもちろん「姿勢をまっすぐにしよう」という意志がありませんから、ずいぶんラクに感じるはずです。

 

 

自分に正直に。

 

 

自分の潜在能力の鍵は、自分の身体に優しく接することに隠れています。

 

 

*参照記事:ブログ・ホルン考より「"背スジを伸ばしなさい"は禁句」

 

 


ジュリアード音楽院やギルドホール音楽院、バークリー音楽院から英国王立音楽大学など世界のトップレベルの音楽教育機関で、演奏家の才能を守り育てるために必須となっている心身教育メソッド「アレクサンダー・テクニーク」。無料メルマガですが、配信内容は豊富で出版されているあらゆる本より分かりやすく、役立ちます。