2012年

5月

22日

失敗の定義

楽器演奏の上達するとき。そのとき脳のレベルで見ると、それまで使っていた神経回路とは違った回路が使われる、ということが起きています。違った回路が発火することで、今までとは異なる身体の動きが引き起こされ、その動きがいままでより効率的なものだったときに「上達」という成果が生まれるのです。

ここで重要視したいことは、上達とは変化そのものであるということです。脳の中でいままでと違った回路が作られ、使われ、そして身体が物理的にこれまでと異なる動きをする。さっきまでとはちがったことが起きているのですから、変化しているのです。

 

まだ弾けないフレーズに取り組んでいるとします。最高音がなかなかうまく出せず、取り組んでいるのです。最後の音階を駆け上がって最高音に向かっていく。しかしこの最高音をまだうまく当てられない。

 

一度目のチャレンジ。音階を最後まで駆け上がりきれずに、下に音が外れてしまった。

二回目のチャレンジ。こんどは勢い余って上にひっくり返ってしまった。

 

さて、これは失敗でしょうか?

 

私たちが習慣的に捉えている「失敗」の意味では、二回とも「ダメだった」から「失敗」となります。つまりどっちも単純にだめだったと分類されて終わりなわけです。

 

しかし、本当に「ダメだった」のでしょうか?

 

否、これはちっとも「ダメ」ではありません。なぜなら、脳の中では二回とも貴重な情報源であり、目指しているものに近付けてくれるナビゲーターとなってくれているからです。

 

どういうことか。

 

一回目は脳にとっては「目指すはもうちょっと上」ということが分かった素晴らしい経験であり、上の音を練習したつもりでラッキーなことに下に音を結果的に練習できたのです。二回目は脳にとっては「目指すはもうちょっと下」ということが分かった有り難い経験であり、上の音を練習したつもりで祝福すべきことにもっと上の音を結果的に練習できたのです。

 

この二回のおかげで、目指す音+下の音+上の音 がよりよく知れました。「二石三鳥」なのです。二回がそれぞれ異なっていた。これは「変化」です。そのおかげで二石三鳥の練習ができ、上達への直線ルートを脳内は進んでいます。

 

しかし、この時点で「ダメだった」というラベルを貼ると、もう脳内はパニックに陥ります。ナビゲーターの情報を信頼してはいけないということになったので、迷ってしまい、どこにも行き着けなくなってしまうのです。

 

失敗の正しい定義は「成功の素」であり「上達の直線ルート」です。失敗とは必ず変化を意味し、変化は上達の必要要件なのです。失敗は起きるたびに、目指すものへのナビゲートをしてくれています。

 

 

 

ジュリアード音楽院やギルドホール音楽院、バークリー音楽院から英国王立音楽大学など世界のトップレベルの音楽教育機関で、演奏家の才能を守り育てるために必須となっている心身教育メソッド「アレクサンダー・テクニーク」。無料メルマガですが、配信内容は豊富で出版されているあらゆる本より分かりやすく、役立ちます。